物語は、主人公の持つ価値観が示され、それが「邪魔される」という葛藤を解消すて終結を迎えるという構造を持つ。
ゴンは父を求め、キルアは支配する家族からの逃走を求めた。
彼らはその役割を終えたので、退場した。
作中でもっとも人望があると描かれているのは、レオリオである。
彼は人望でハンター協会の会長になる。彼は最も安定した人間である。
安定した人格であるレオリオは、家族のことを語らない。
語る必要がないからだ。それは、彼の家庭が健全であることを示している。
レオリオには葛藤がないので、物語にあまり関わらない。物語は葛藤を必要とする。
クロロをはじめとする蜘蛛たちは、一切の血縁を持たない。そして、「わたしたち」と同じ倫理観を持たない。仲間以外を人間として認識しないので、心を痛めずに殺すことができる。
しかし、彼らは。強固な絆で結ばれた仲間がおり、おそらくクロロは孤独でいた時期がない。
呪いにかけられて初めて彼は孤独になる。
一方、クラピカは、一族の中で大切に育てられたようだ。しかし、彼には血縁が一切いなくなる。彼は、彼の一族の遺体の一部を取り戻す、という物語を生きている。
ハンター×ハンターは、古典的な物語構造を丁寧に維持し続けている。
主人公が葛藤し、それを解消する構造を崩さない。葛藤が解消されたら、物語から退場する。
kクロロとクラピカは徹底的に対照的な存在として描かれる。
クロロの能力が人のものを盗む、拡張的な性質を持つものであるのに対して、クラピカは、「蜘蛛を罰する」ことにしか使えない限定的な性質を持つ。自己を罰する。ある能力を使えば、寿命がなくなるというのは象徴的だ。彼は、自分を罰しながら、人を罰しようとしている。
クラピカを除く一族を殺されるという悲劇がある。彼はそれを取り戻そうとする。生きた一族を取り戻すことは不可能なので、それは悲壮である。
その上。その前に彼は死ぬかもしれない。ただ、その復讐の過程によって、一族に代わる仲間が生まれる可能性が示唆されている。
クロロが、家族はいないが仲間に恵まれていた存在であれば、クラピカは家族はいたが仲間を奪われた存在だった。
クラピカはクロロから仲間を奪う。クロロはクラピカから奪われた仲間を取り戻すことができない。一度失われた存在は二度と戻らないからだ。
死ぬと二度と会えない、ということが一回だけ覆った。それがアリ編だが、その軌跡は二度と起きないだろう。
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