軽トラさんが家に来ました

マレフィセントを観た後(あとでネタばれのエントリを書きます)、一緒にスーパーで買い物をして、家に招きました。
軽トラさんのリクエストで、手料理を振る舞いました。心配しているようなことは何も起こりませんでした。

昔のわたしだったら、手料理なんて、試されているみたいで、絶対に作らなかったと思うし、作ったとしても、皮肉や嫌みを言ったと思います。
でも、なんとなく、作っても良いかなという気持ちになったので、我ながら不思議でした。

手料理と言っても、豚の冷しゃぶとみょうがと大葉のサラダと、なすの煮浸しです。ドレッシングがおいしかったせいか、好評でした。
その他にスイカを切って、ミルクのチャイを出しました。
「すいか、いいにおいだねえ」と言っていました。

軽トラさんは、手伝うことありますか、と聞いてくれたので、やっぱり上品な人だと思いました。
わたしは、こういうとき、テレビを一心に観ているだけの男性がいることをすでに知っています。
手伝いますかの一言が言えない人もいるのです。

軽トラさんは、椅子に座っても良いかと聞いてから腰掛けました。

家からの景色を見たり、部屋の広さに感心したり、綺麗に掃除しているんだねえ、すごいねえ、と言ってくれました。
埃が貯まっていたのか、最初、靴下のままだったのに、スリッパ借りていい?と言われたので、今度はぞうきんがけもしようと思いました。

料理中も会話をしていて、自動車を買うのは、利便性を求めて買う場合と、虚栄心を満たす場合とがあって、十年で、二百万円も四百万円もすぐ飛んでってしまうから、必要がなければ買うことないよね、ということで見解が一致しました。

たとえば、大工さんの中にはハイエースを買うひともいるそうです。荷物を全部入れっぱなしにできるところが良いそうです。
でも、とても高価な車で、中古で二百万円、新車で四百万円かかると言っていました。
わたしは、中古のマンションが買えてしまう、と言いました。維持費やガソリン代、税金を入れたら、マンションが買えます。
軽トラさんは、軽トラの方が安いし便利だし、止めやすい、ハイエースにする必要ない、もしも、収入が一千万だったら違うかもしれないけど、と答えました。
十年経ったら、四百万円が消えてしまうもんね、それだったら、おいしいものを食べるなりなんなり、他のことに使いたいと言いました。

自動車は移動するために必要なだけだから、移動手段があるところに住めるのが一番良くて、それで済むなら車なんて持たなくても良いと思うと言ってくれました。

それから、わたしのまえの仕事をなぜ辞めたのか、聞かれたので話しました。
プログラマをしていて、仕事が向いていなかったから、というと、どんな風に向いていないと思ったのか聞かれたので、
「綺麗なコードと汚いコードがあって、でも納期があるから汚いコードでも早く書かないといけなかったんだけど、それができなかったから。そして、今の仕事は、自分の裁量で、自分の好きなペースで計画たててできるから」
「それは自営業の醍醐味だね」
「うんそう。あと、会社向いてなかった。協調性ない。みんなで、とかできない。学校のときだって授業中に本読んでたくらいだから、会社が向いているわけなかった」
「社長になれば良いよ」
「なれたらねえ。あと、自分ができることないのに、他の人が大変だからって、残業しないといけないのもいやだった。人生が損失するって感じで」
「やることないのに?」
「ないわけじゃないんだけど。手伝えることなくて。でも、残ってみたいに言われて。でも残業代でないし。あと、作っても、途中でやっぱ違う風にしてくださいと言われるのの繰り返しで。これで自分の一生が終わってくんだ、と思うと虚しくて。作るのは楽しいし、作ったのが動けば嬉しいんだけど、使われなかったやつとかいらないと言われたやつ、考えてる時間が無駄って言われるのがつらくて。賽の河原で石を積み上げてるみたいな気がして。虚しくて。要領も悪かったし」

「ふうん、そうなんだ。どうして、プログラマになりたかったの?」
「そういう学校にいたし、そのときは好きだと思ってたから。そして、ばりばり働きたいみたいな、漠然とした夢があったからかなあ。今考えるとバカみたいなんだけど。でも会社の先輩が、後輩にタバスコ一気飲みさせたり、殴ったり蹴ったりとかもあったから。会社の雰囲気に慣れなくて」
「大工の世界よりひどいな…。同じ業界で転職しようと思わなかったの?」
「しようと思ったんだけど、技量が足りなくて。あと、会社移動してもあんまり変わらないってのもあった。わたしのレベルで行ける会社ってことだけど。

面接までは通ったんだけど、だめで。お金が尽きたから、こっちに帰って来たけど、そういう仕事はそれほどなかったし、今思うとそこまで熱意がなくて。親は実家に帰って来ても良いよと言ってくれたから、最初はアルバイトして、社会復帰しようと思ったんだけど。ユニクロとかも落ちちゃって。そしたら、母が、塾講師の求人見つけてきて。
子ども相手だから、癒されるしいいんじゃない?って言ってくれたから、受けたら向いてた」
「それまで教えたことなかったんでしょ?」
「お金をもらって、教えるのは初めてだった。でも、説明したり、同級生に教えたりするのは好きだったよ」
「他の先生とか昼間どうしてるの」
「実力が本当にある先生は、不登校とか、病気の子とか、社会人教えてるから、昼間も埋まってる。あと、予備校の先生は一日仕事があるよね。わたしはまだ実力がないから、でも、勉強会出たりしてる」
「それはいいことだね。おれは、土木科出たんだけど、なんとなく自然破壊っぽいから、違う仕事に就きたくて、そしたら、知り合いのおやじさんが手作りの昔ながらの大工さんで、そこに面接行って、七年働いたよ。すごく腕の良い人で、すごい勉強になった。施主さんが、直接やり取りできるから、大工からもこういう風にしたら良いと思いますとか提案ができて。そういうのが良いって言うお客さんが集まるから、良いと思うよね。ちゃんとした木の家が造れるから。

今はハウスメーカーが主なんだけど、一割は、そうじゃなくて、ちゃんとした、ちゃんとしたってのもおかしいけど、木の家作るんだよね。だから、おれ、その一割に入りたいんだけど。まあ、入れないのは力不足ってことなんだけど。入りたくて。そういう仕事したいんだけど。なかなか難しい。でもなんとか考えて入れるようにやってかないとね。あるわけだから。少なくても」

軽トラさんは、先日、わたしが軽トラさんが一重まぶたなのか、二重まぶたなのか見ていなかったことをショックだったと言いました。
「目が細いか細くないかも知らない相手と、会って、ごはん食べてたの?

c71ちゃん、コンタクトか、眼鏡かけてよ。もうこんな会ってるのに、あとで思ってたのと違う顔だったとか言われると困るから、顔ちゃんと見てよ」というので、しかたなく眼鏡をかけて顔を見ました。なので、今日はずっと眼鏡かけたままいました。恥ずかしかったです。
「やっぱりそういう細い眼鏡似合うね」と言ってくれました。慌てました。
前田敦子にちょっと似てるよねー」と言っていたので、困りました。
「似てないよ。髪型だけじゃん。あ、でも毒がない前田敦子に似てなくもないと言われたことならある」と言うと、
「ほらやっぱり言われるんじゃん」と言われました。
「どっちかと言うと、杏々とか、小雪に似てると言われるけど」
「あー、ちょっとわかるような気がする」
「髪長いときはちょっと似てたかもしれない」
「軽トラさんは特に誰にも似てないね」というと、「ごん中山に似てるって言われたことある」「嬉しかった?」「微妙…」というような会話をしました。

軽トラさんは香里奈香椎由宇みたいな女優さんの顔が好きだそうです。わたしはUAみたいな顔に生まれたかったというと、美人ではないよね、と言っていました。左右対称で目がぱっちりいている顔が好きなんだね、というと、そうだよ!と言いました。

c71ちゃんは、化粧してなくてもしててもあまり顔違わないね、良いと思います!つけまつげガ!変身!みたいなのより、好きだと言っていました。
「わたしは化粧して顔変わって変身、みたいな風になりたいよ」と言うと、
「おれもさ、男は化粧しないからしないけど、本当は化粧して顔変えてみたい」と言いました。
「どこ変えたいの?」というと、
「やっぱ、眉とアイラインかなあ。目の周り変えたい」と言っていました。

c71ちゃん、ちょっと痩せた?しゅっとした?」とコメントされました。
「痩せてない!全然痩せてない」
「そうかなあ。ちょっと痩せたような気がする」
「痩せてません。ああ、やだ。あああああ。触れないようにしていたのに。気にしているのに」
「太ったって言ったんじゃなくて、痩せたって言ってるんだから」
「違うの!もう消え入りたいの、そこに注目してほしくないの!」
「でもさ…やっぱやめた」
「なに」
「いや…失礼かもしれないから」
「失礼かもしれないって言うときは既に失礼なんだよ」
「じゃあさ、言うけど、おれ、言葉悪いかもしれないけど、ぽっちゃりしている女性って良いと思うよ。がりがりより。女性の思う美しさって、痩せてたら痩せてるだけ良いって人多いけど、ぽっちゃりしてるのも可愛いと思うけどなあ」
「わたしが思うちょうど良い、がりがりではない美しい体形ってあと二十キロ痩せた体形なんです」
「じゃあ、歩いたら…」
「プイ」
「話題変えようか…すいません」
「うちのカーテンの色可愛いでしょう」
「青いね!キラキラついてるね」
「そうでしょう」

軽トラさんは、ビールとほろ酔いを合わせて一リットル飲みました。
それで、おなかがいっぱいになったみたいです。
「がんばって全部食べなくても良いよ。うちだから、明日食べるし」
「そういえばそうだね」
c71ちゃん、大好きな炭水化物食べなくていいの、我慢は良くないよ」
「ちょっとでも食べる方がつらいの、我慢できなくなって少しじゃ耐えられないの。だからいっそのこと食べない方が良いの。でも、なんだかんだいって、一日の間に炭水化物的なもの食べているから大丈夫だよ。それにしても、野菜でこんなにおなかがいっぱいになるものなんだね。これからそうしよっと」
という会話をしました。

あとは、ユーチューブで、お互いの好きな曲を聴かせ合ったりしました。わたしは、Alex Boye と、UA及川光博を押しました。及川光博のときはテンションがあがって、今夜桃色クラブへ、と死んでも良い’98の素晴らしさを強く語りました。
「ウインクした!ほら!ウインクした!きゃー、うつくしー、うつくしー!同じ時代に生まれて良かった」
「たしかに整った顔だよね」「でしょ!」
「ていうか、この人正体不明だよね。俳優なの?歌手なの?」
「アイドル!でしょ!!!」
「でもおかまっぽくない?最近の及川ミッチーは男っぽくて好きだけど、この頃はおかまっぽくない?」
「違う!王子!あとはー、オダギリジョーの顔好き」
「全然路線違うじゃん。KinKi Kidsとかは?」
「好きだけどー、光一君は好きだけどー」
「剛は?」
「どうでもいい」
「ひど!おれ、金田一少年の事件簿とか、ともさかりえとか、好きだったよ。はじめちゃーん、つって」
「光一くんは王子だけど剛は王子じゃない」
「…」
という会話もしました。

軽トラさんは「トイレ借りても良いですか」と聞きました。
「だめって言ったらどうするの?」と答えたら、
「コンビニまで行く所存です」と言いました。
それから、
「この缶、どうしたらいいですか?」と聞いて、台所で、缶とコップを洗ってくれました。

軽トラさんは、したうちじゃないんだけど、ちゃっと音を立てるときがあります。嫌いになるとしたら、ここの部分なんだろうなと思います。
そこをわたしは受け入れられるのかなあと思いました。

そして、電車の時間が来たので、駅まで送りました。
帰り道でなんかあるかなあと思いましたが、特に何もありませんでした。
軽トラさんは、いつもよりも、ニコニコして、リラックスした様子でした。
「家飲みいいでしょ」と言うと、
「家飲み、ってあまりしないけど、けっこう良いね。周りみんな結婚しているから。ご家庭にお邪魔するとかあまりできないから、やったこと、あんまりないんだけど」と言っていました。

帰り際に、
「もう怒ってない?」と聞かれました。
「なんだっけ」
「忘れたんだったら怒ってないね!」と軽トラさんは嬉しそうでした。
「いや、思い出した!怒ってるよー」
「もう怒ってない。よかったー」
「謝ってよ」
「ごめんなさい」と言って、軽トラさんは頭を下げてくれました。笑っていました。わたしも笑っていました。

帰るときは、改札のまえで、

「またね!」
「またね!」
と言って別れました。

追記

その後、メールが来て、サラダがめっちゃおいしかった、ということと、また連絡する、ということでした。
わたしは、眼鏡かけて、軽トラさんの顔見れてよかったです、来てくれて嬉しかった、楽しかったと返しました。
そうしたら、眼鏡かけたc71ちゃんも可愛いよ、眼鏡かけていた方が良いと思うな、とメールが着ました。

だから、可愛いって言われて嬉しい、眼鏡に合わないと思ってた、軽トラさんの前でだけ、眼鏡かけるね、とメールしました。

終わり。

c71の著書

スポンサーリンク
広告

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください