どかぐいがやめられなかった。
去年の夏には一日五個アイスを食べていた。
そういう自分がいやだった。鏡を見るのもいやだった。
自分が醜いと思っていた。
隠したかった。
でも人に会う以上、隠れられないのだった。だけど、隠れたかったので、布の多い服を着ていた。
そういう風にして、一年過ごした。
どかぐいをすると、おなかがいっぱいになって、眠くなる。眠くなりたくて、食べていた。
さみしかったり惨めだったりイライラしたり、そういう感情を整理することが面倒で、向き合いたくなくて、食べさえすればその間の時間が過ぎるから、ただ、時間の過ぎ方を早めたいだけで、食べ物への愛情なんて何もなく食べていた。
自分のからだを見ることができず、鏡の前で目を背けていた。
自分がどれだけ太っているのか、見たくなかった。
人に知られたくなかった。
そして、人前では平気な振りをしていた。
全然平気ではなかった。
新しい商品が出たら飛びついて、味わってみて、何か達成している気になった。
わたしには、コレクション癖があるのだ。
ある日突然、糖質制限ダイエットをしようと思った。
甘いものを食べる自分が急にいやになったからだ。
でも、やめるのは難しかった。毎日食べないといられなかった。
でも、仕事中に異常な眠気が襲ってくるので、お昼ごはんを抜いていたら、眠くならず、意外と快適だということを感じた。
その勢いで、寝る前には、低糖質のものでお腹いっぱいにする、ということをしてみた。
できた。わたしはヨーグルトが大好物なのだ。
メイクレッスンを受けたり、洋服をプロに選んでもらったりしてから、外見を気にするようになった。
お腹いっぱいにならなくても良いかなと思い始めた。食べなくても、洋服やメイクで満ち足りる部分があった。
ダイエットのやり方に関して、お医者さんや薬局の人に相談して、朝だけは糖質を取った方が良いとアドバイスされた。全く取らないと、糖に敏感なからだになってリバウンドしやすくなったり、問題が出たりするからとのことだった。
自分の感情を受け止めること。見ない振りをしないこと。目を背けないこと。
惨めさを、惨めだと、受け入れる。
なかったことにしない。強いふりもしない。
わたしは泣きたかったり怒ったり、悲しかったりやるせなかったりする。
それをなんとか、ないことにしたいと思っていた。
それで食べていた。
でも、お医者さんは、心の微妙な動きは軽く見ない方が良いと言った。
食べるのはやめられた。でも、今度は、買い物をし始めた。今までも無茶食いをやめると、買い物をし、買い物をやめるとどか食いをしていた。
ただ、今回、食べることを減らして、買い物に走ったのは、わたしは良い変化だと思っている。
自分の欲望が自分のからだをいじめることから、若かった頃に欲しかったものを手に入れようとする行動に変化したから。時間をつぶすだけの行為から、楽しむことを求める方向に依存対称が変わったから。
わたしはまだ自分の感情を正確に見ることができていないから、依存してしまうんだろう。
ひとりでなんとかしたいと思うからもっと苦しんでいるんだろう。
だけど、未来は変えられる。
愚かなわたしだけど、これからはわからない。
少しずつ、時間をかけて、変えていきたい。
自分の姿をまっすぐ見ることができるようになった。
体重計に載ることができるようになった。
食事内容や睡眠時間をメモすることができるようになった。わたしは以前よりは現実を把握している。
把握していないときは、ふわふわと怖かった。足下が不安定な気がしていた。
わたしは、少しでも良いから変わりたい。泣いて、感情を外に出して、そこから始めたい。