性にかかわる女たち 性暴力被害や、セックスワーカー、子どもから性暴力を守りたい人など

ことさら、性に関することを口に出す女は加害されます。
特にネットの世界では可視化されます。

わたしは疑問でした。なぜ、性暴力被害者が、性暴力の存在を訴えることや、セックスワーカーの存在自体が、攻撃対象になることのか。

同情しろとか、なんとかしろとか、そんな話は一切していないのに、逆上し、怒り、ののしる人たちがどれだけ多いことか。

(多い、という単語を書くと反射的にデータを出せとか統計を出せとかいう人がいますが、それも抑圧の一形態です)

国家の本質は暴力装置である。暴力というのは、法律に反した力、という意味じゃなくて、攻撃する力で相手を統率することすべてを指します。

国家の本質は軍隊であり、警察です。国民を武力でもって統率し、支配するのが役目です。少なくとも、生まれはそうです。

国家が最も暴力装置としての暴力を発揮するのは、警察であり、裁判所です。
合法的に、取り締まること自体が、国家の暴力の本質です。

性暴力被害者を、本気で国が救済したことが今まであったでしょうか。
性暴力加害者を本気で国が取りしまったことはあるでしょうか。
被害者になる立場の者を、脅し、抑圧してきた……そのこと自体が、暴力であり、国家の機能です。国家が、国を統率するために発揮した力そのものです。だから、弱いものを彼らは脅すのです。
弱いものを脅さなければ、家父長制は保てないからです。
暴力で脅し、その一方で、いうことを聞けば、暴力から守ってやる、とささやくのが、ロマンティック・ラブ・イデオロギーが、国家権力が、女たちや子どもたち(そして男性たち)を統率するために果たした役割です。
つまり、性暴力被害者は、その、脅しながら抑圧する、抑圧しながら、保護を囁くことを宣伝するための道具にすぎず、国家を成り立たせるための供物なのです。性暴力被害者が存在しなければ、女を脅して、「守り、扶養する」代わりに「家事労働、性行為」を行えと言えないのです。
だから、彼らを救済することはないのです。
そして、人々が、性暴力被害者を非難するのは、国家の行為の後追い、そして、国家が「恐怖を振りまく」行為の荷担なのです。ロマンティック・ラブ・イデオロギーを強化し、国家の安定を図るための一つの戦略なのです。

セックスワーカーについては、その仕事が、合法か否か決めること自体が、国家権力の暴力です。
彼らを合法、非合法、と裁くこと自体が大きな力です。それ自体が暴力です。
そして、彼らが、悲惨な目に合うと、大々的に宣伝します。
あのような仕事に就くから、悲惨な目に合うのだと。

これも、恐怖を植え付けながら、保護を囁く、国家の「家父長制」の存続のための戦略です。セックスワーカーに加害を与えるものは、ほとんど軽くしか罰せられないのです。
自業自得、と多くの人がいうでしょう。危険な仕事をしていたのだからと。
しかし、それを危険な仕事にしているのは、誰なのでしょう。

世の中には危険な仕事がたくさんあります。でも、国が認めた仕事、有用だと思っている仕事は、ちゃんと安全基準が用意されているし、その仕事に就いた人が殺されやすかったり病気をしやすかったりけがをしやすかったりする状態にいつまでも置かないと思います。

何千年も、セックスワーカーは存在します。それなのに、その長い間、セックスワーカーを危険な状態に置く、というのは、不自然なことです。
他の職業と同じように考えたら、明らかにおかしなことです。
なぜならば、国家の存在価値は、国民や市民を安全に守ることにあるからです。
なのに、一部の市民を、ある職業についているからと言って、その安全の網の目から放棄するのは故意です。
それどころか、彼らを罰し、裁こうとします。権力を使って。これが暴力でなくては何なのでしょう。
セックスワーカーに対する暴力を作り出し、それを国家維持や家父長制の維持に使おうとするために、セックスワーカーはいつまでも苦しまなくてはなりません。

これらは女を「良い」女と「悪い」女とに分けるために存在している仕組みです。

「良い」女なら、そこまで、悲惨な目に合わない。服従すれば、高圧的な夫でも殴る夫でも、セックスワーカーほど無残な殺され方をしない。だから、お前は逃げる必要はなく、我慢することができるはずだ。そう迫るために、セックスワーカーや「悪い」女や、「価値を失った」女は機能するのです。

自分は今苦しいけれど、あの「悪い女」よりもましだ、と自分自身に言い聞かせるための機能としてもそれは機能します。

性暴力被害者が「セクハラ」と訴えることを恥を重ねるといってあざ笑うことも、セックスワーカーが「ライツ」と権利を訴えることも、鼻で笑われるのは同根です。

それは、国家に対して不服従だということを表します。
国家というのは男社会です。
男(これは便宜上の用法ですが)にとって有利な仕組みを乱す動きは、馬鹿にされます。
女を男に供給するための仕組みが、「家事労働や性行為」を「扶養」で置き換える仕組みであって、決して賃金で与えられないことを乱すことは、すべて反逆とみなし、男性社会を体現している男性にとっては、攻撃の対象になります。

関連c71.hatenablog.com
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性にかかわる女たち 性暴力被害や、セックスワーカー、子どもから性暴力を守りたい人など」への2件のフィードバック

  1. id:c71 さま
    >性暴力被害者を、本気で国が救済したことが今まであったでしょうか。
    性暴力加害者を本気で国が取りしまったことはあるでしょうか。
    警察は動きが歯切れ悪いですよね。私はあんまし性暴力とは思っていないのですが、一度同じコンビニで何日も同じ男につけ回されて大きな声で卑猥なことを叫ばれたので震えながら店員さんに警察を呼んでもらったことがありますが、警察官は防犯カメラの確認もせず(実際何が起きたかを確認せず)私を家まで送ってくれました。まあナンパがエスカレートしたような感じだったんですけど、警察は緩いですね。調書もなし。痴漢だと調書書かされるんですよねー。(しかも何をされたか詳細に言わなきゃいけないし、)財布無くしたって携帯無くしたって調書書かされるのにね。
    私の以前のコメントで主語が大きいという言葉を使ったと思います。あれは、「女」とひとくくりに書かれてしまうことで自分の立場も弱く、自分が被害者として生きているのかと感じてしまったからです。
    私はあまりそういうことを感じたこともなく、(運が良いだけなのかもしれませんが)自分の性を前向きに受け止めていたため面食らいました。そしてc71さまは少し他の人より発言力があると思ったので、ああいったコメントをしました。
    私は自分が男性より生物学的には劣っている部分もあるけれども同等もしくはそれ以上の能力を発揮できる男社会で結果をだせて、性がその人自身を損な立場に追い込むことは少ないのではないかと思いました。(というか経験しました)。
    たぶんそういう経験が私に変なプライドを作り上げてc71さまに「主語が大きい」とコメントしたと思います。

  2. id:d1e2a3r さま
    おはようございます。
    主語が大きい、…ということをかいたときには、以前いわれたことは念頭にありませんでした^^;
    だから気にしないでください。
    運がよく、男社会でも実力を発揮し、認められることはありますね。
    わたしもそういう経験はあります。
    でも、現実には「女の子の方が劣っている」と内面化されて(自分自身で思わされるくらいしむけられて)子どもの頃から育てられる現実があるわけです。
    女の子は数学などが苦手、とか。
    女の子の生徒さんに、数学はできるんだよ、というだけで、女の子には数学はできないという偏見を取り除くだけで、成績が伸びる経験を何度もしているので、その呪縛はやはり大きいと思います。
    また、一般的に、男性社会で、女性が認められるというのは、大きな局面でいうと少なく、国会議員を見ても、女性議員のときにはヤジや罵詈雑言がひどいですね。
    そういうことを書きました。

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