頭数になれなくても

わたしは、いわゆる「頭数」にはなれない。
それにはいろいろな理由があるけれど、個人的なことだから。

bcxxxさんは、明確にマジョリティを志向し、マジョリティによる運動を肯定して、マイノリティを切り捨てている。

男女差別に対しても、「そんなこと」よりも、今は共通の目的に走るべきだ、という意味のことを言う。
彼の言うことが総和ではないにしろ、彼は発言力があるようだから、そういう思いを持つ人も多いだろう。

その一方で、彼の言う言葉に違和感を感じている人も多いだろう。

効果的な反戦という言葉には違和感がある。反原発運動で、ないがしろにされたものに無批判だったせいで、それに加われなかった人たちが多く、そのため、運動はみんなのものではなくなってしまった。
反原発も、反戦も、とても大切なことだから、それはとても残念なことだ。

そもそも、「自民」というものが、マジョリティの象徴であって、最大のものだ。
マジョリティに対して、無批判でいたことが、戦争への道を招いた。
だから、マイノリティが日々抱いて来た違和感に耳を傾けていたら、ここまでには至らなかったはずだ、という思いがある。マジョリティの人たちは、以前からも今もマイノリティを軽んじている。

自分がマジョリティだと思うならば、マジョリティの代表である自民党政権が行っていることについて、自分の責任を語っても良いだろう。
世の中をマジョリティが変えるというのならば、今までの世の中を維持して来たのもマジョリティなのだ。
マジョリティが世の中を変えると自負するのならば、その反省を考えなくては。

わたしたちはマジョリティだ、マジョリティには数の力がある、マジョリティが世の中を変える、デモに来て、頭数になるべきだ、というならば、同じ法則で動いて、政権を得た自民となにもかわらないのではないか。
マジョリティに力があるのだとしたら、このような世の中にして来た責任もあるはずだ。
それを反省せずに、「マジョリティが世の中を変える」というのはおかしい。
マジョリティがこの世の中を作って来た、という自負はないのか。
言わせてもらえば、アベを選んだのは、マジョリティだ。
数も、権力もあるマジョリティたちだ。
今までの世界が心地よく、違和感がなかったから、現状維持を選んだ人たちが、選んだ結果だと思っている。
違和感を放置してきたから、事態が進行して来たのだと思っている。

こういう風に、過去のことを言うのは生産性がないのだろうか?
だけど、生産性がどうの、と考えること自体がすでに間違っていると思う。
そうではないものを大切にすることが、反戦につながるのだと思う。

そもそもマイノリティかどうかは、数で決まることじゃない。
発言力や尊重のされ具合、対等になれるかどうかで決まることだ。
権力のなさ具合による。

bcxxxさんのいうマジョリティになるためには、違和感を飲み込むのが前提になっているようだ。
そんなことよりも、今は共通の目標に向かうべきだと。

だけど、人類の半分は女性だから、女性の持つ問題を無視しては、その違和感を飲み込めたり、そもそも違和感を感じない女性しか加われない。

女性が女性らしくあることを「売りにすること」は、まず、ふたつの問題があって、「女性らしさ」を誰が規定するのか、それがなぜ「売り」になってしまうのか、がある。

誰かが「この人は女性らしい、女性の魅力にあふれている」とジャッジするということは、他の場面になったら、その人や、それ以外の女性を「女性の魅力がない」とジャッジすることになりかねない。
しかし、デモにおいて、女性の魅力というものは、そもそも必要なのか、という疑問がわく。
また、それを「売り」にするのは、それにひかれてくる人たちの性質を考えると、やはり、そこにも問題がある。デモは、人々の意思で集まるものなのに、女性の魅力にひかれて「頭数」になる人々は、なにか、問題を起こしそうな気がしてならない。その問題の矛先は、おそらく男性であるbcxxxさんには向かわず「魅力ある女性」に向かうだろうし、そして、その問題の解決能力は、運動体にないだろう。今でさえ、セクシズムにたいして無頓着で、何が問題なのか理解できない人たちだから、いざ何かが起こっても、対処することや、そもそも問題発生自体に気づけないだろう。

わたしは、はっきり自分のことをマイノリティだと思っている。

t.co
こういう風に、「圧倒的なマジョリティが」問題を解決していくと書かれる。
じゃあ、マイノリティは、何もせず、文句だけ言う存在なんだろうか?
マジョリティだけが世の中を動かしていくのだろうか?

いや、違う。

マイノリティにはマイノリティの戦い方がある。
マイノリティはマジョリティがなにも不自由を感じなかった故に、問題意識を持たなくて住む状況で暮らしている頃から、ずっと、違和感を持って、そのことを考え、発信し、自分たちなりに動いて来た歴史の蓄積がある。
その蓄積を無視して、マジョリティが世の中を動かし、マイノリティは座して見ていると、言わんとばかりの態度を取られる筋合いはないのだ。
そもそも、マジョリティが世の中を動かすことに対して、違和感があるのだから。
マジョリティという分厚い壁に、言葉を届かせようとし続けて来た、マイノリティには、力がある。
マイノリティは、たしかにいろいろな脆弱性や弱さがある。だけど、その中で鍛えて来たものがある。
わたしにもある。
わたしは、自分で言うのもおこがましいけれど、文章の発信力がある。
わたし自身が、体調不良などをおして、いわゆる「頭数」になるよりも、こうしてブログを書いていることになにか意味はあるだろう。
効率は大事じゃないけれど、bcxxxさんの価値観にのれば、そういうことになる。
わたしから見れば、マジョリティの人は、普段は日常に埋没して暮らしているのに、みんなが何かやり始めたとたん、同じ行動を取り出すから、少しびっくりする。
マイノリティの人は、自分の違和感を日々表明している。

表明というのは大切なことで、少しずつ世界を変える。
隣の人のことを変えられなくても、ディスプレイ越しの誰かの気持ちを楽にしたり、喜ばせたり、できる。
それは、戦争とは反対のベクトルの動きだ。
一人一人がバラバラのまま、連帯できるからだ。

みんなで何かする、連帯する、それは素晴らしいことなのだろう。だけど、それに排除がともなっていて、健康で、違和感を感じず、もしくは飲み込める人々だけを集めた反戦というのは、軍隊に似ているような直感があって、恐ろしい。わたしはその場に入れない。

わたしはマイノリティだ。
だけれども、だからこそ、磨かれて来た表現力がある。
いわゆる「頭数」になれたら、それは素晴らしいことなんだろう。効果的に、意思表示できるのだし、そういうことをする人たちには、最大のリスペクトを送りたい。わたしにはできないことだから。

でも、だから、bcxxxさんが、マジョリティを賛美し、頭数になれない「わたし」を「降りた」というのは、飲み込めない。
わたしは、デモにいけない。
だけど、わたしには、わたしのできることがある。
それは、bcxxxさんが「効果的」と考えているやり方とは違うかもしれない。
それでもやっぱり、わたしにもできることがあるのだ。
人々の悲しみに寄り添ったり、わたしの悲しみや憤りを開示すること。
そうしたことも、やはり、反戦なのだ。
それが、わたしの反戦。

デモにいろいろな事情があっていけない人たちが、自分を責めないで、自分を許してほしいと思う。
わたしたちは、行きたくても行けない事情を抱えている。
それは誰に恥ずべきことでもない。
わたしたちにできることは、限られているけれど、それでも心に反戦の灯火をともしていれば、いつか、なにか、自分なりの方法が見つかるはずだ、見つからないとしても、それで良い、とにかく生きていくこと、それ自体が、運動であって、戦いの一部なのだ。

c71の著書

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頭数になれなくても」への3件のフィードバック

  1. そうはいっても民主主義である以上、大同小異を目指さなければアベに対抗し得る勢力にはなり得ません。
    マサキさんの言う通り、連帯に伴う「切り捨て」があるかもしれませんが、そうはいってもアベに対抗するためにはある程度の人数が必要です。
    対抗勢力によってしかアベに対抗出来ないのに、マサキさんは自分がキレイでいたいピュアでいたいために、何にもコミットせずに、アベに対抗するために社会運動に参画し、その成果を無自覚に享受しその責任を負ってる人をはたから批判するのは、単なるタダ乗りでしかありません。
    マサキさんは日本で飲食業を営んでいらっしゃる。店で出す食材(野菜や肉、あるいはアルコール)が製造される過程で、どれだけの搾取の構造があるか。地方とは言えども中心地ですこし食材を加工するだけで、周縁で生産に従事している第一次産業の担い手が得られる利益の遥かに多くのものを得られます。この構造にはいつ目を開くのですか。マイノリティだから許される、のですか。そしたら反戦運動内部の問題をスルーする姿勢と同じになってしまいますが。

  2. わたしはマサキさんではありません。
    そして、何もコミットせずにという部分はおかしいです。批判もコミットの一部です。
    それは、ただ乗りではありません。
    マイノリティだから何もかも許されるとは書いていませんし、飲食業を行うことと、反戦運動の内部の問題には、何も関係ありません。
    そして、あなたが、「頭数」になれるのならば、そうしたら良いと思います。
    そうできない事情のある人もいるわけです。
    それに対して想像してください。
    わたしは、あなたを何も止めません。

  3. 放っておこうと思いましたが、ほとんど誹謗中傷のようなことを書かれているのでこの場をお借りして応答します。c71さん、お許しください。
    > 対抗勢力によってしかアベに対抗出来ないのに
    →事実誤認だと思います。
    > マサキさんは自分がキレイでいたいピュアでいたいために
    →あなたの勝手な推測です。
    > 何にもコミットせずに
    →あなたの勝手な推測です。
    > その責任を負ってる人をはたから批判する
    →「はた」とはどこですか? どこかに中心があるのですか?
    > この構造にはいつ目を開くのですか
    →私がその構造に気づいていないというのは、あなたの勝手な推測です。
    > マイノリティだから許される、のですか
    →これはあなたの勝手な推測であるだけではなく、捏造と印象操作です。
    以上です。これ以上の応答は拒否します。

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