世界にひとつのプレイブック 感想

すごく面白かった。
わたしも主人公のパットみたいになることがある。外側から見るとああ見えるのかなるほどーと思った。
ぶつぶつこだわって同じことを言っている。それで、自分ではまともなつもりだ。
だけど、全然望みがないと諭されると暴れるから、まわりは希望を持たせるようなことを言ってくれる。それを真に受けてしまう。

ティファニーもよくわかる。
いろいろな男を誘って寝ちゃうこと。なんか、傷ついているんだけど、話が早い方がいいかなとか、正しいことが難しくなってめんどうくさくなって、寂しいしいいかなと思ってしまったり、そういう中での面白みのようなものを漂っているうちにビッチと呼ばれてしまうことの不本意さ。

周りの病気じゃない人々がみんな病気みたいだった。
へんなことにこだわっていて。
わたしは自分が病気だから他の人のまともさがどんなものなのか、気になる。
わたしから見て、わたしよりも病気だなと思うことも良くあるけれど、判断基準が壊れているわたしが思っていることだからなと思って、黙っていることが多い。

でも、そういうのを描いてあるので、フェアだなと思った。
精神病患者や、それを取り巻く人々に対して愛があるなと思った。

そもそもパットは友達がたくさんいてうらやましい。警察にも愛されているし、みんなパットに良くなってほしいと思っていて、意地悪なひとがいない。ありのままのパットをみんなが愛していて、良くなってほしいと祈っている。

だから、これは、本当におとぎ話で、救いがあって、それがすばらしいと思った。
社会派じゃないし、ロマンチックで、夢見がちで。

それが現実に近いと思った。

わたしも犯罪にあって、仕事を失った。
人生がめちゃくちゃになったと思った。
希望なんてなかった。
でも、今は仕事が楽しい。それだけで食べていけるほどは働けていないけれど、仕事が楽しい。
周りの人に恵まれてもいる。にこにこ働ける職場って本当におとぎ話の世界だと思っていた。
犯罪に合わなかったら、わたしは、今の仕事に就かなかったと思う。今の仕事に就いたのはたまたま求人を見て応募したからで、条件もあまり良いものとは思えなかったから、元気なときなら応募しなかったと思う。

平穏な生活が一番だ。
でも、平穏な生活を送っていると、だんだん「閉じ込められている」ような感覚になる。
ひどく虚しくなり、寂しくなる。
もっとほめて!だとか、恋人がほしいだとか、転職してみたいだとか、とにかく「今」から逃げたくなる。
人生を変える出来事に出会いたくなる。
わたしは、ちょっとでも落ち着いてくると「このまま老いていくのか」と怖くなる。

実際には人生を変える出来事というのは、ありがたいことじゃなくて、不幸の顔をしてくることが多い。
でも、それを受け入れたら、「外」に出られた感じがする。
その繰り返しなんだろうなと思う。

わたしは、精神の成長が遅くて、勉強が大好きだったから、勉強ばかりしてきた。
それから、「お金とは、自分の欲を満たすツールなのだ」と天啓を抱き、お金を稼ぎたいと思うようになった。でも、時既に遅しで、いい仕事に就けるタイミングは逃していた。
だから、とても後悔し、お金を稼ぐひとが偉いのだというステージにようやく到達した。

その先には、たぶん、お金を稼ぐことばかりが人生じゃないぞゾーンがあるらしい。
小さいことを幸せに感じること。
確かに不本意ながら、桜の密集している中から、三時の空を見上げて、昼間の月を目指して飛行機雲が突っ切る様子を見ると、これは確かに幸福だと思わざるを得ないわたしもいる。
毎日映画を観たり、本を読んだり、ブログを書いたり、昼寝をしたり、食べたいものを食べる生活をしていると、これ以上の幸福はないとも思える。

パットは、そういう小さい幸せを見つけることができて、本当によかったなと思う。
わたしも、パットみたいに、心が動くようになるといいな、と思う。

c71の著書

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