今日は、自分では意識していなかったのですが、外に出て、人と会ったら、「この話題と話し方は、正解か、不正解か」ということをとても考えてしまったので、調子が悪かったようです。調子が悪いと、コミュニケーション能力が、とても下がります。自閉症スペクトラムの症状が強く出ました。強く出た、ということを補足すると、普段、他の能力で補っていて嵩まししている部分が、むき出しになってしまった、ということです。
だから、とても不安になって、よけい手探りになって、時間差が生じて、言葉が遅れてしまって、相手をより不愉快にさせます。
自閉症スペクトラムの人は、「他人をどうでも良いと思っている」と思われがちですが、そうではないと思います。個人差はあると思いますが、他人がいることは知っていて、自分と違うことも理解しています。ただ、どうやって思いやればいいのか、そのポイントがわからず、ずれてしまうのです。
それは、そもそも、相手を観測する力が弱いこと、相手の要求していることを理解する力が弱いこと、インプット、アウトプット両方の力が弱いので、ずれてしまうのだと思います。
人の表情や、言葉以外のムードが全く読み取れなくて、のっぺらぼうと会話しているようでした。
顔があるのは、わかるのですが、そこにある目と口と眉の関係が、読み取れず、ただ茫洋と存在しているように感じました。
人間の、頭と体が切り離されて、そこの漂っているように見えるのです。そして、どこからか、声が聞こえてきます。それはその人から発しているのはわかりますが、その関係が、ビビットではありません。どこか漠然としていて、不安でした。
声の調子もわかりづらかったです。抑揚があるのは、わかるのですが、それが何を意味しているのかがわからないのです。明るいトーンなのか、暗いトーンなのか、もともとのその人の声質なのか、体調が悪いのか、機嫌が悪いのか、その原因がわたしにあるのか、それ以外なのか、さまざまな場合が考えられます。
深く考えれば考えるほど、消耗し、疲れます。
笑った顔になっていても、本心は、わたしと話すのがいやなのかもしれません。わたしが不愉快なことをしたかもしれないし、場にそぐわない、不適切な話題を選択していたかもしれません。
相手の考えることがまったくわからないときは、自分にとって、悪い方悪い方に考えてしまいます。
こういうときには、人に対して距離をとって、馴れ馴れしくしない方が良いのです。できるだけ、よそよそしく、礼儀正しくするくらいでちょうど良いのです。馴れ馴れしくして、気を悪くする人はいますが、無視しない範囲で、黙って、微笑んでいたら、たいていのことは大丈夫なはずです。
今日はほんとうに手探りでした。
一緒に働いている人の声の調子がわからなくて、冗談を言っているのか、怒っているのか、わたしに不満があるのか、職場に不満があるのか、わからなくて、あいまいに微笑んだり、目を丸くしたりして、過ごしました。
お客様が多く、キャンペーンで、同時多発的に仕事が発生して、ただでさえパニックになっているのに、お客様に、声が聞こえづらくて、イライラしている人がいたので、困りました。レジを打ち終わって、清算が終わって、おつりを出しているのに、六円を出して、何か言っているのです。わたしはなにが要求されているのか、わからなくて、戸惑っていました。
「二千円いただきましたが」
「この子かえてくれや。話にならん」という部分は聞こえました。
「六円出して、十円おつりくれればいいだろうが」と言われました。だから、そうしました。
どうして怒っているのかわからないので、悲しくなりました。
そのあと、ちょうどあがる時間だったので、他の人が明るい声で、あがって良いよ、おつかれさま、と言ってくれたので、それは、肯定的な響きだとわかって安心しました。それでもドキドキしました。
それから、バレエに行きました。友だちの先輩に、いろいろ話しかけましたが、よそよそしくされていると感じ、この前、しつこくしすぎただろうか、など考えました。大人は、笑顔でも、本当に笑顔の場合と、困っているから笑顔の場合と、怒っていて、放っておいてほしいから、笑顔になる場合があるので、難しいです。
正解か、不正解か考えだすと、見えない答えを考え続けることになるので、不毛です。
わたしの場合、現実的なのは、そういう兆候が見えてきたら、家に帰って、薬を飲んで、休むのが正解です。
調子が上がれば、対応する力も、もう少し増えることが多いからです。無難に、パターンで、礼儀正しく、やり過ごすことができます。そうでなくても、つらいことがあっても、気にしないように、はじき返す力があります。
今日は、目が見えず、耳も聞こえないように、人の表情や声のトーン、ムードがわかりませんでした。そして、そのことがつらく感じました。
目と鼻と口と手振りは、組み合わせによって、記号のように、無数の意味を生み出しますが、それがわたしには、まだ習っていない外国の文字のように読み取れないのです。
そして、その無数の文字は、逐次的に変化して、わたしに対応を要求し、適切な対応ができない場合、安全な世界から、真っ暗闇の奈落へ放り出そうとするのです。