おしゃれには型があり、学ぶことができる

29歳の時、友達に紹介してもらったコーディネーターに、パーソナルデザインと、パーソナルカラー診断と、お買い物同行をしてもらった。
それから、何年かに一回はお願いしている。

今日はずいぶん気落ちをしていた。
わたしの書く文章は誰にも必要とされていないのではないか。
もちろん、友達は良いと言ってくれる。読者さんも今日のわたしの状態を見てか、声をかけてくださった。
だから、ゼロってわけじゃない。そこに意味はある。
全員に好かれることはできない。

今日はヘルパーさんが来た。
「これ捨てる?」と聞かれた。それは、いわゆるプチプチだ。
何となく取っておいてしまうものがいくつかあって、紙袋と、レジ袋と、プチプチはその筆頭だ。
「捨てないとゴミ屋敷になるから捨てる」と即答できた。
わたしの母は捨てるのができない人だった。
大人になってわかるが、買うのは楽しいけれど、捨てるのは難しい。
人にあげる人がいるけれど、捨てることができないからっていうのは大きいと思う。
メルカリの売り手が、高い手数料と手間にも関わらず、せっせと売るのはお金が欲しいというより「捨てるのが嫌」だからだと思う。
(メルカリは買い手のモチベーションは確保されているが、売り手にはないのが特徴だと思う)

わたしが手を上のほうに上げても、赤ちゃんはびくっとしない。
それは、わたしが赤ちゃんをたたいたことがないからだ。
ということに気づくということは、わたしは母にたたかれていたということだった。
窓を閉め切ったままにしていると、気が狂いそうになるのは、母がわたしに怒鳴る前に、家中の窓をバタバタと大きな音を立てて閉めていたからだ。外に音が聞こえないようにするためだ。

わたしは、母から、人を虐待すると人がどうなるのかを学んだ。
そして、服を着るということは学べなかった。
(今、パソコンを買ってもらったことを思い出して、混乱している。パソコンは買ってもらえた。下着や服や、ブラジャーを買ってはもらえなかった。それなのに、いい母親だと思いたいのだ)

毛がふわふわしたセーターを、二十代のころから一度でいいから着てみたいと思っていた。
でも、「絶対に着てはいけない」のだと思っていた。
でも、コーディネーターに「似合いますよ」と以前言われたことを思い出した。
その時は買わなかったけれど、試着してみたら、大丈夫だった。
十五年前から欲しかった服を、ようやく着ることができて、「悲しい」と思った。
この十五年間はどうしても、どうやっても、どれだけ憎んでどれだけ怒ってどれだけ二度と会わないと決意したところで、「戻ってこない」のだ。
本当に欲しいのは、虐待されていなかった自分が味わっていたはずの二十代だ。
でも、嘆いていたら、今度は「三十代のわたしの人生」まで失う。どんなひどい罠だろう。

若い私がふわふわの毛が生えたセーターを着たら、にあっただろう。
幸い、わたしのパートナーは「よく似合うよ」と言ってくれる。それはわたしを癒してくれる。
でも、深いところで、わたしは乾いたままだ。癒されない。

何年かに一度コーディネーターにお買い物同行を頼むのは、わたしの中にいる新しい部分を発見する冒険に、一人ではいけないからだ。
一人ではいけないけれど、ガイドがいたら、新しい視点を発見できる。知識も体系的に知ることができる。
わたしは自分が何を好きだったのか、もう、わからない。
何が好きだったのか、客観的にどういう姿なのか、コーディネーターに教えてもらう。
わたしは、バケモノみたいな姿でもなくモデルでもない普通の人間だということが分かり、世の中には普通の人間のための服が売っており、それは、お金を出しさえすれば、どんな人格でも買える。手に入れられる。
否定されて育ったから、わたしにはふさわしくないとしり込みしてもしまうものでもお金はわたしにそれを与えてくれる。
好きな服を着るためには、メイクや組み合わせや、体形についての知識が必要だ。
それは、自分のためだけのものだから、わたしに合わせて言葉を紡いで、現物を見せてくれる仕組みがありがたい。

わたしの母は、ゴミを捨てられなかった。何がゴミか、何を取っておくべきか、区別ができなかったからだ。
五年間放ったらかしにしていたゴーヤの種を勝手に捨てたら怒鳴られた。
形の崩れた数十年前の服、べたべたに汚れたなにか、そういうものも彼女は捨てられない。
そういう気持ちも理解できてしまう。
でも、わたしは客観的に考えることを学びたい。彼女よりも前に進んだ人生を送りたい。
わたしに窓を閉める意味を教えたことは間違っている。
わたしは開かれた窓を知りたい。窓の先に何があるか。
わたしは自己表現をしたい。
そのせいで、わたしがとてもとても嫌われてしまうのは悲しいけれど、わたしはそれでも自己表現したい。

c71の著書

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