なんの才能もなく息絶える

わたしには、才能がない。

なんの才能もない。
このまま息絶えるんだろうなと思う。

生きていくための才能はまあまあある。
世の中に適応する才能もある。
暗いことを乗り越える才能もあるし、表現する才能もある。
このまま息絶える才能は少ない。

音楽を聴いたり、絵を見たり、漫画を読んだりすると嫉妬する。わたしにはないものだからだ。
若くして成功している人のことを知ると悔しい。
単に楽しめない。悔しさでひりひりする。

わたしはお金持ちになれないし、有名な人にもなれない。
立派な人でもない。

なんにもならない。なんでもない。

昔はそれがさみしかった。

今はそうでもない。

それが不思議だ。悔しさは変わらないけれど、今では少し遠い。生々しさが。

わたしは平凡で、普通で、でも、ちょっと普通じゃなくて、普通以下で、得意なこともあって、全体としては、仕事をして、暮らしていられて、恵まれている部分もある。

何かになりたかった。
わたしはさみしかった。
今だって、さみしい。
何者にもなれない自分がさみしい。

胸の中にぽっかり空いた穴は、どうしようもないものだ。

忙しい日常の中に埋もれていくことは幸せに思うけれど、掘り起こしたくなる日もある。

わたしはわたし。
何者にもなれない。ならない。どこにでも行く。どこにでも行かない。

わたしはわたしの頭の中にいる。

c71の著書

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なんの才能もなく息絶える」への2件のフィードバック

  1. こころの穴も、小さい女の子もだんだん存在が薄くなっていく。良いことなんだろうけど、時々、すごくさみしく、取り返しがつかないところまで来てしまった気分になる。

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