マイノリティとアドバイス

長患いしていると、アドバイスをもらうことがあり、困惑する。

長患いしていると、病気に関して医者よりも詳しくなる。医者に、薬の使用感がどうだったか、情報提供するようになる。

わたしは精神疾患とアレルギーがある。両方とも、相互に作用する。
人生がいろいろ難しかった。

わたしは、好きで病気になったわけじゃない。
悪いことをしたから、または、生活態度が悪かったから病気になったわけじゃない。

だけど、病気の人に対して、人は容易くアドバイスする。
病気の人は、全体のバランスを見ながら、生活しているので、そのアドバイスを断ることがある。そうすると言われる。「だから、治らないんじゃないの」「病は気から」「素直にならなきゃ」

そう、人格まで口を出されるのである。わたしが、病気であるという一点を持って。

医者でさえ、言わないことを、素人の皆さんはおっしゃる。聞きかじりの情報を、病人が既に知っているとは思わないらしい。愚かだなあと思う。

医者からアドバイスを受けるのは、医者を信頼しているからだ。この医者に言われたことを実践してどうにかなっても、わたしはそれを受け入れる、という覚悟ができているから、医者に向き合い、どんなことでも言う。その内容には羞恥心を伴うこともある。

アドバイスしてくる人には、そんなことまで言いたくない。だから、言葉を濁して交わそうとするけれど、なかなか逃がしてもらえない。理由も内のに「アドバイス」を実行しないのは怠惰だからと決めてかかる。

健康な人だったら、テレビ見て夜更かしして不規則な食生活をしてだらだら生きて、パチンコして、お酒飲んで、過労しがちなほど労働しても、口を出されることはほとんどないだろう。

でも、病気だと、生活態度から心構えからなにからなにまで口を出される。
一人前の大人として扱われない。見ず知らずの人でさえ、見た目でわかる疾患に関しては、口を出す。なんて嫌がらせなんだ。

たとえば、わたしは、ストレスがかかると過食する。でも、リストカットするとか、オーバードーズするよりは良いと思っている。でも、家族に過食はやめなさい、甘いものをやめなさいと言われたので必死になってやめた。ストレスのはけ口はないので、調子を崩した。だが、これはまだいい。
過食は確かにからだに負担がかかる。

だから、今度は、浪費を始めた。心のバランスをとるために何かあるのは仕方がないとあきらめてやっている。ストレスが減れば収まることだ。

でも家族は月にいくら貯金しなさい、と言ってくる。わたしは、自分が普通に生活するだけで、仕事に行くだけで精一杯だ。

ダイエットしなさいとも言われる。だから、ダイエットした。

わたしは不眠がひどくなった。これには解決法がないのだけど、今度は彼氏が「パソコンをやるから眠れないんじゃない?」と言った。
わたしはテレビを見ることができない。感覚に過剰な負担がかかるから苦痛なのだ。音楽も聴けない。ラジオも聞かない。PTSDを発症してから、本を読むこともできなくなった。
深夜に目が覚めたら、じゃあ、わたしは何をして、やるせない苦痛を耐えれば良いんだろう?

わたしはそういって泣いた。
わたしが健康だったら言わないことを、どうして、あなたは言うの?
そのアドバイスを実行して、わたしがどれだけ苦しむかわかっていっているの?あなたは医者よりも詳しいの?わたし自身よりも病気に詳しいの?もし、あなたが、同じようにアドバイスされたらどんな気持ちになるの?あなたは完璧なの?誰にも指摘されない生活をできているの?

そういったら、わかってもらえた。
彼はまだいい。説明を聞き入れてくれるからだ。困るのはこうした、どうしてアドバイスを聞けないかの、説明を聞く気がないひとだ。一方的に言い放っていい気持ちになりたがることに、ただでさえ人生がたいへんなのにどうして、付き合わなきゃいけないんだろう。

人を救いたい人は、一方的だ。そして、弱者と認めた人に対して、あれこれ言いたがる。たまたま、不便がないだけで、どうして自分をそんなに良いものだと思えるのだろうか、不思議でならない。
そんな資格も、力もないはずだ。
専門家にもどうしようもないことを、どうして、自分のアドバイスで変えられると信じているのかわからないし、それが「人の暖かみ」と表現したりそれを拒絶することを「冷たい」と表現するのも、理解しがたい。

説明しないからわからないのだ、とも、良く言われるし、知らなかったんだと悲しそうに言われるが、反論や説明を聞く気がないというシグナルを受け取ったからそうしているだけなので、聞く耳を持つ人には相談している。
(相談するのが苦手な人もいるだろうけど、わたしは相談する方だ)

わたしはわたしに独立して、考えて行動している。
だけど、健康な人は、それを否定する。足りないという。
わたしがアドバイスを聞き入れない理由を、説明を、理解しない。受け付けない。
そういう人たちは、ただ、自分の言う通りにすれば解決するのに、あなたのためを思っていっているのに、恩知らずだなあ、くらいなことを言う。

わたしが病気なのは選んだことじゃない。
わたしはそもそもストレスがかかっているので、だから、ストレスに弱く見えるだけで、他の人よりも負担に耐えながら暮らしている。

ほんのささやかな息抜きさえ、非難されるのは、わたしが病気だから。
それは、わたしにはどうしようもないこと。
病気の人に、何か言っていいかどうか、病気の人に聞いてから言う人はほとんどいない。
ありがた迷惑だと言うことを理解しない人が多い。

わたしが困っているから助けてほしい、助言が欲しい、と頼むことと、頼んでもいないのに、助言をくれると言うことは違っている。
わたしは助言を聞き入れないわけじゃないけれど、その助言が役立たないことを経験上知っている。それだから、わたしはアドバイスを好まない。

占いを始めたとき、家族にはっきりと非難された。反論を許されなかった。
だけど、お金を取ることがそんなにいけないことだろうか?
占いは労働だ。話を聞くという労働だ。
集中して、一生懸命その人のことだけを考える。

どんな仕事だって、値段のつき方はいい加減だ。
住宅を例にとると、100万円下げたら買います、と言うことは良くあると思う。そして、実際に値段はあっさり下がったりする。だったら、そのもともとの100万円の値段は、なんだったのだろう。

値段と言うのは、共同幻想から、こんなものだろうと、みんながなんとなく同意してできている。同意できない人はその値段で買わない。買う人は、それを了解している。
肉体労働だろうが、なんだろうが、弁護士だろうが、コンサルタントだろうが、そういうものだ、とみんなが思っているからお金を払う。何か根拠があって、値段が決まっているわけじゃない。慣例とか、習慣とか、歴史とか、その人が生活できるレベルかどうか、とか、専門知識がいるか、どうかで値段が決まっている。

美術品なんて、ある人にとっては、がらくただし、ある人にとってはすごい価値があるものだ。
だから、値段は、固定されているものではなく、流動的なものだ。

わたしは商売は、人を傷つけたりだましたりしなければそれで良いと思っている。それに、占いをしたがったのは、わたしの別人格だから、わたしには干渉することができなかった。

それもわたしの病気の一部だ。多重人格が病気かどうか、わたしにはわからない部分もあるけれど、病気と同じで、わたし自身にはコントロールできないどうしようもないものだ。

健康な人だって、コントロールできない領域があるだろう。そこに、アドバイスされて、それが実践できないことだったら、丁重にお断りするだろうし、そこまで踏み込まれたことを言われてむっとすることもあるだろう。

だけど、病気の人に関しては、何を言っても良いという共通認識が出来上がっている。
それは、病気の人だけじゃなく、「弱者」と呼ばれる人すべてに共通のことだと思っている。
「弱者」とは、コントロールできないことがあり、なおかつ、そのコントロールできないことが、本人の怠慢や選択の仕方の不備によるものだと、勝手に思われることで発生していると思う。そういったときに、他人はアドバイスする。

弱者にはいろいろなバリエーションがあって、貧困だったり健康だったり職業だったり性だったり、いろいろなマイノリティがいるのだが、そういった人は、実行不可能なアドバイスをされやすい。
しかし、根本的に、解決するのは、マイノリティだということをやめることに等しく、そして、マイノリティの属性を持っているのはその人が選んだことだとしても、結局どうしようもないことなのであった。
職業だろうとなんだろうと、マイノリティになると同時に、プライバシーや、気持ちを侵害される機会が圧倒的に多くなる。
マイノリティになることを、選んだんだろうがそうじゃなかろうが、侵害されることまで込みで選んだり、マイノリティになった人なんていなかろうに。

侵害されたがっている人なんて、この世にいない。

弱者になるのは、何か悪いことをしたからじゃない。悪いことをしたからだとしても、私的領域にずかずか踏み込まれるのはいやだ。
いやだ、という気持ちを持つこと自体を否定されることだってある。
わたしはとても悲しい。
腹がたつ。

それを、人に理解してほしいとまでは言えないけれど、平穏な生活を送るために、人との接触を極力減らしているのは、そういうわけなのだった。
そして、そのことをやっぱり世間が狭くなると言ってくる人もいるので、この世は地獄だなあとも思うのだった。

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