反差別は共感を必要としない

“わかってほしいは乞食の心”という田中美津さんの言葉を読んで、その言っていることも分からないのに、感電したようだった。そのあと、ゆっくりと意味が立ち上ってきた。

「わかってほしい」と懇願すること。媚びること。その時点でまだ力の差が解消されていないということ。
わかってほしいための努力を一方がし続けるということ。
相手は、ずっと「いや、お前の説明ではわからない」「説明が不十分だ」「根拠は」「わからない」そういい続ければいい。
いくら丁寧に言葉を紡いでも、わからないのだ。わかりたくないのだ。わかりたくないから、永遠にわからないのだ、相手は。
なぜなら、この社会は、彼らにとって都合がいいものだから、手放したくないものばかりで、その手放したくないものは、被差別者が踏みにじられた上に成り立っているから。

わたしを駆り立てているものは怒りだ。

それは、“クソオス”と発言する人はフェミニストか。
このブログを読んだからだ。

社会制度の優位性に乗っていることに無自覚な《男性》を罵っても、性別としての差別をしたことにならない。
女性が男性を罵っても、社会制度を作り運営しているのが男性である以上、女性は男性を差別できない。
だから、クソオスといいながら、性差別に反対することは矛盾しない。権力差があるから。

共感は時として、反差別の邪魔になる。
「ああ、それ、おれもあったよ。よくあることだよね」「それって、あなたが親しみやすい・魅力的・思わせぶり、だからじゃない?」
「油断していたから悪いんじゃない?」
「もっと気を付ければよかったのにね」
「どうして騙されたの?」
「どうして逃げなかったの?」
「どうして、その男を選んだの?」
「どうして、その道をその時間に歩いてしまったの?」
全部、わたしが言われたことのあるセリフだ。
女性ならば、一回くらい、自分が言われたことはなくても、耳にしたことはあるんじゃないか。
被害に遭った人が「どうして」とかけられる言葉。
被害者は、被害に遭ったという自覚がないままの時でも、「どうして」「なぜ」の前に、おろおろして立ち尽くし、自分を責めていく。

わたしは、初めて、十歳の時に痴漢に遭った。電車に乗っていたらからだを擦りつけられた。
道を歩いていて、殴られ首を絞められ、羽交い絞めにされた。
セックスをしてくれ、お金を払うから、と言って、未成年のころ、付きまとわれた。
ストーキングされた。
レイプされた。
お金を盗られた。
脅迫された。
監禁された。
面接に出かけたら、女だから、この会社でできる仕事はない、と言われた。
結婚したら、仕事はどうするんですか、と聞かれた。
妊婦の時、男連れで、昼間に道を歩いていたら、わざと足をかけられそうになって警察に駆け込んだ。

そうした相手は全部男だったが、「男が社会を作っている」くらいのことを言うだけでも「たまたま」「偶然」「思い込みすぎ」と言われる。

全部の男がそうじゃないことをわかってほしいんです、と男たちは言う。
「男だって、そういう目に遭う可能性はある」と男たちは言う。

だったら、「その通り」の男たちに、何か言ってくれ、と思う。
彼らには、「その通り」な男たちが見えない。
そして、自分は「そうじゃない男だ」と思い込んでいる。
女が犯罪を起こす割合と、男が犯罪を起こす割合。
犯罪のほとんどは男が起こしている。

丁寧な言葉を使う余裕を持てと人は言う。

余裕。
例えば性別差別について、賃金格差が、正社員同士で比較しても、女の賃金は男の半分ほどももらえない現状で、生活を脅かされたまま持つ余裕とは何なのか。
年収一千万円を超す人間の男女の割合のいびつさを知っていて、そう言えるのだとしたら、無神経だ。
シャドウワークと言われているものすべて、ほとんどを女性が担っている、それに費やす労力自体がハンデなのに、「そのハンデがあるから、男性と同じ賃金は上げられない」と言われる理不尽さを肌で感じていてもか。
人が一人生きるのにかかるお金は変わらないだろうに、わたしたちは、「違う」といわれて生きてきた。

社会制度を決定する場に女性は本当に限られた人数しかおらず、その人たちも男たちから足を引っ張られている。
政治家でも「家庭との両立は?」と聞かれるのは女だけだ。
いちいち「美しすぎるなんとか」と容姿をとりだたされる。それも女ばかり。

へりくだり恭順の姿勢を見せ、腹を出すのが余裕ならば、そんな余裕はいらない。
あなたの脅威にはなりませんよと、常に言って、相手の機嫌を取るようなことはしない。

わたしが、ひどい目に合うのは、女だからだ。高校生の時に、進路で悩んでいるときに「女は出産するから、会社がとるメリットはないよね」と男性の同級生が言ったのは、「どんなに勉強しても、男にはかなわない」と男性教師が言ったのは、わたしが女だからだ。
出席名簿が、混合になる前、男子から先に名が呼ばれ、女が後回しにされた。「そんなこと、合理的な区別だから、差別じゃない」そう言われて、女は片づけをし、男は外に遊びに行った。

女とは何か。
まんこがあることか。子宮があることか。卵巣があることか。子を産めることか。心が女ということで、女か。男を愛せば、自他ともに女と認めていれば、女か。

わたしは、腹を裂き、子宮から赤子を取り出し、今も文字通り乳飲み子を抱えながら、この記事を書いている。
女というなら、わたしはまごうことなく女だろう。
そう、わたしは女という名をもつ。
誰もがわたしを女と呼ぶだろう。母親と呼ばれ、妻と呼ばれ、誰かの娘と呼ばれる。そして、わたしは役割の中に本当の名を失っていく。

わたしは、自分が女だということで不利益を感じて、知ったときからずっと怒っている。
女が立ち働き、男が飲み、くだをまく正月に。
子供だからと、反応を面白がって、嫌がってもくすぐり続けるおっさんに。

わたしは、ずっと最初から怒っていた。
だから、自分のために学んだ。本を読んだ。
怖いと言われても、変わっているといわれても、生意気だと言われても、絶対に怒っていた。
わたしは、今だって怒っている。
怒らないと伝わらない。
高校生の時に「女を雇ってもメリットがない」と男性に言われて、わたしは丁寧に抗弁した。
しかし、まったく通じなかった。
そこに問題があるとは思われなかった。「合理的でしょ。女が出産して育てて、それで世の中回っているのだから」と。
穏やかに言っても、強く言っても、どうせ通じないのならば、自分で自分の表現を自分の好きなように、コントロールするほうがどれほどましか。それは、自分の軸となる。
それでも「まし」という程度にしかならない。

わたしは、自分の怒りを理解するために、生きるために、生きるための武器を磨くために、防具をそろえるために、フェミニズムを学んだ。なじめないフェミニズム、なじめるフェミニズム、いろいろなフェミニズムがあった。
わたしの胸を打ったのは、素朴なウーマンリブだった。学問ではなく、声の言葉をまとめて、戦った女たち。

わたしは興味を持っていただくために、へりくだって、声をあげたくない。
いつだって、自分本位、自分のためだけに、戦いたいと願ってきた。その願いがどれだけ反故になっても。

それが自分を尊重するということだからだ。
わたしは、自分を尊重する。
わたしは、わたしの怒りを尊重する。
わたしの怒りの期限、「いつまで怒っているの?もう忘れたら」という言葉に耳を貸さない。
わたしの怒りはわたしのものだ。わたしの言葉はわたしのものだ。
「もっとスマートな方法があるんじゃない?人を集めるような」そういうものは必要ない。

フェミニズムは、他のひとに共感されるためにある訳じゃない。
反差別は共感を必要としない。
尊重されるために、お情けはいらない。
当然あるべきものを取り返すだけだ。
堂々としていたい。
共感されるためにどうこうとは、下に虐げられたことを受け入れる恭順の姿勢だ。わたしは絶対嫌だ。

わたしは怒っている理由も、その怒りの期限も、行く末も、表現方法も、全部自分でコントロールする。
それが、自分を尊重するということだから。
他のひとに伝えるためにフェミニズムをやってない。
全部全部自分のため。
媚びてなんとかなるものか。
媚びなくてはならないことが怒りなのだ。

反差別は、「おまえが認識していないで済んでいる問題があると認め、理解しろ」ということから始まる。
そこには、共感は必要ない。
共感とは、自分が理解できる、つまり、自分の立場を破壊しない「被差別者」を選別するためのもの。
怒りは、社会を変革する力だ。
自分たちがメリットを享受しているものを、壊すことを恐れるものは、「共感したい」という。
共感できるものを探す。
そして、社会を変革しないで済む範囲でだけ、差別をなくしました、という表現をする。
でもそれだけだ。
それがマジョリティにとって安全だからだ。
自分たちの既得権益を失わないまま、人道的なふりができるから。

怒り、悲しみ、非生産的だと言われ続けてきた、感情的、生々しい、生理的なもの。
反差別に、理屈は必要か?
人が生きるために、心、体、思考、感情、何か一つ欠けてもならない。
生々しい、実際に生きている、血の流れるこの体が、あるということ。それだけが必要だ。たとえ殺されたとしても。
殺されるということが大げさだと言われようと、殺されかかりながら生きながらえてきた、それがわたし。
殺される危険と生きること、そのほかの合わなくて良いことに遭うということが差別。

反差別に共感は必要ない。


投稿者: c71

c71の一日 フェミニスト、自閉症スペクトラム、双極性障害(躁鬱)、性暴力サバイバーhttp://www.vesii.jp/ ベシー占い 占いをしています。

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