わたしの住んでいる街、長野

たいていの人にはどうでもいいと思うのだけど、わたしが住んでいるのは長野市だ。

長野市は、長野オリンピック以降、借金の返済に追われ、全国でも有数な高い税金を誇っている。もちろん、今でもそうだ。
ひいひい言いながら、税金を払っている。
その代わり、福祉と教育には、お金をかけていた。
今は、少子高齢化、というよりも、人口減に悩んでいる。
やっと、借金返済のめどが立ってきたのに、人口減のため、公共サービスの継続が難しくなるのだ。
手始めに、水道料金が値上がりする。水道には、管理や設備投資がいるのだ。

ところが、出生率は、平成十七年から、増加し続けていて、平成27年の今年は、なんと出生率が1.55にまで上がった。
わたしも今年産むが、長野市の手当ては、たいしたもので、妊娠の間には、ほとんどお金がかからなかった。すべてが補助金で済んだといっても過言ではない。
出産費用も、ほとんどが、補助金でカバーされるので、自費で払う金額は少ない。
優待もたくさんある。保育所にかかる金額も、少ない。保育所も、たくさんある。
民進党と、共産党が強い土地柄でもある。保守的ではない。
共稼ぎがほとんどなので、ゼロ歳児保育をするといっても、何か言ってくる人もほとんどいない。

福祉の充実ぶりは、驚嘆に値する。国保で障碍者だと、医療費が、ほとんどただになる。月に、500円払えばいい。
それは、長野市独自でしている制度だ。他県にはないことに驚いた。
市役所も、とても、親切で、総合案内のお姉さんに、「こういうことで困っている」というと、適切なところまで案内してくれる。そして、一回座れば、次から次へと、職員さんがやってきて、手続きと説明をしてくれる。
わたしたちが、移動する必要がないのだ。
障害福祉課は、非常に親切だ。どういうサービスが受けられるか、どうやって生活を立て直すか、教えてくれる。
ほかの自治体では、自分で調べて、こういうのをお願いしますといわないと、存在も教えてもらえなかったような制度も、向こうから教えてくれ、手続きを進めてくれる。

この前、タクシーに乗ったら、女性の運転手さんが、「うちは、事実婚なんだけど、事実婚届けがあって、それを出すといいわよ」と教えてくれた。
ネットでググっても出てこないが、今度、聞いてみようと思う。

十年前、長野市は、ゴーストタウン化した。しかし、今は、だいぶ活気が増えてきた。

映画館も三つあり、そのうちの一つは会社ができてから120年続いている。
本屋さんも、数は減ったが、まだある。それぞれ個性を売り出している。
松本市には、ブックカフェの文化が盛んだそうだ。

週末には、音楽フェスがよく行われている。ジャズ、ロック、邦楽、伝統的なお囃子など。
公共の場所で、ビアガーデンが行われる。
外でちょっと遊んだり、飲んだり、食べたりする場所がまだある。
東京では、空気を吸うのにも、座るのにもお金がかかる感じだったけれど、ベンチがそこらへんにあるので、座って、のんびり山を眺めたり、花を見たりすることができる。
夕方には、定時で帰る人たちでいっぱいだ。街中を歩くのも楽しい。
ただし、夜は早くて、十時には居酒屋は閉店する。土日も休みだ。

地域医療も盛んで、田舎でも総合病院が頑張っている。佐久総合病院というところが、戦後から、地域医療に力を入れてきた歴史がある。有名な医師に、若月先生という方がいる。

生活指導を医師や、保健師さんが一生懸命行っているから、寿命も長い。ぴんぴんころり地蔵、というのがある。その名前を聞くと、他県の人はぎょっとするようだが、長野の人は、そこにお参りする。長生きはしても、ぴんぴんしていて、ころっと死ねるのが理想なのだ。

昔、姨捨ということがあった。姨捨山という地名の場所がある。実際に行くと、少し恐ろしい感じのするところだ。
長野は貧しかった。長野が変わったのは、生糸産業で、日本の三分の一の海外輸出のお金を稼げるようになってからだ。
今では、教育県ではないと自嘲的に語られるけれど、やっぱり、教育をさせようとする意欲はまだまだ高いと感じる。
進学率は、そんなに高くはないけれど、一人一人の学力が高いと感じることが多い。

長野県には、在日韓国人がたくさん住んでいる。それは、戦中に、地下防空壕を作るために、たくさんの人たちを連れてきたからだ。
天皇家を住まわせ、首都機能を地下に移動させる計画があった。
たくさんの人が使役され、死んでいった。
そういう歴史もある。
今でも、レタスなどに関して、人身売買が行われているという現実もある。

観光地として有名だが、観光地というのは、景気に左右される。
景気が良ければ、お客さんが来るが、悪くなれば来なくなるし、飽きられるということもある。
最近は、外国からのお客さんが多い。
地獄谷のサルの写真が、全世界で有名になったために、アジアからも、北欧からも、本当に世界中から人が来る。この前、道を聞かれて、どこから来たのか尋ねたら、ポーランドだと言われて、本当に驚いた。
ムスリムの人も、よく見るようになった。
おやきが有名だが、外国の人には、食べにくいということで、おやきをつぶして、クレープにして、提供したら、当たったらしい。

観光地に住むわたしとしては、観光立国という方針は危うく感じる。

長野は、生糸産業の流れを継いで、精密機械や、パソコン、素子を作る流れがある。
有名なところでは、信州大学の繊維学部だ。
繊維学部という名前だが、やっていることは、素材の開発だ。
そこが、技術を引っ張ってくれているので、まだ、工業系の産業がある。
だから、賃金は、東京に比べると非常に安いが、まだ、働くところはある。
(最低賃金が笑っちゃうほど安い)

野菜も果物もおいしい。
気候は、冬は確かに寒いが、降水量が通年を通して少ないので、いつも晴れている。冬も晴れている。夏はそれなりに暑いが、湿度が少ない。冬も、風がないので、気温の割には暖かい。雪の量は、山国なので、住む場所によってだいぶ違う。

以前、ナガノパープルというブドウが、他県のデパートで、四倍以上の値段で売られていて驚いた。
夏は、スイカも、ブドウも、桃も、桃系の果物も豊富でおいしい。
山だから、日照時間が少ない。それが本当に欠点だと感じる。海もないので、わたしは旅行先にはリゾート、ビーチばかりを選んでしまう。わざわざ寒いところや陸地に行きたくない。

街づくり、政治は、生活と密接している。
ここに住んでいると本当にそう思う。
田中知事について、いろいろと批判があったが、彼が来てからずっと役所関係のサービスのレベルが上がった。
公僕、という意識が根付いたんだと思う。
人口減は深刻な問題だが、首都圏の数値よりも、長野市のほうがずっとましなのだ。
それは、市政や県政が、ずっとその問題に向き合ってきたからだと思う。

だいたいの人は、しがらみで、住む場所を選ぶのだと思う。
わたしもそうだ。
でも、長野市は、住めば不満はいろいろとあるけれど、やっぱり住みやすい。
教育と福祉、自立支援に力を入れていることと、市報が配られて、市議会で問題になっていることが「市議会だより」にまとめられて、誰が何をしているかが、透明だということも、とても好きなポイントだ。
図書館も充実していて、フリーで勉強できるスペースが、そこかしこにあるのも、いいと思う。

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