あきらめとの付き合い方

昨日書いたエントリの続き


生徒さんを教えていると、「先生わからない」と言って問題を持ってくることが良くある。
聞いてみると、見た瞬間に、「無理だ」と思って読んでいない。
できないと信じることが、できないという現実を作る。その信念を捨てる。
本当はそれだけで問題の何割かは解決する。

だから、励まして、「良く読んだらできるよ」と言って、隣で見守っていると、「あれ、簡単だ」ということがよくある。

ここでの教訓は三つ。

問題は良く読まないといけない。
できないと思っても、励ましがあればできる。

そして、あきらめも肝心。

彼らが、宿題をあきらめたこと、その判断は正しい、ということ。

利用するべきものがあって、励まされてできるのだったら、励まされる場に持ってくる、という判断は正しい。

宿題を出すとき、わからなかったら、どんどん飛ばしてね、と言う。
じゃないと、わからない問題で凍り付いて、気持ちも落ち込んで、残りの宿題ができない場合があるからだ。
だから、得意な問題を先にやってもらう。
これは、気の持ちようじゃない。
気分は、戦略的にコントロールしないといけない。お金を払って来てもらっていることの一部は、気分をコントロールすることだと思っている。
気分は軽く見られがちだけれど、すべてを支配する。結果も支配する。
気の持ちようだとバカにする人も多いけれど、気の持ちようは、どうして、大変な問題だ。

気の持ちようをコントロールできるひとは、なかなかいない。病気になったら落ち込むし、体調が悪ければ、気力も湧かない。気力がなければ体調も悪くなる。気力が湧かない、自分は怠けている、と嘆いている人がいたら、そばに行って、良く寝てから運動しろ、できれば、散歩をしろ、と言ってやりたい。

生徒が難しい、と判断するときには、問題を良く読んでいない。
公式を知っていても、いくつかの解放のパターンを知っていても、その組み合わせで解けることがわからない。
それは、経験がないから。
俯瞰して見られないから。

俯瞰する、ためには、経験と学習が必要だ。

彼らは自分にはできない、と信じている。
その、まさに、能力がないと信じている事実が、枷となって、彼らから読む気力そのものを奪う。読解力を奪う。能力を奪う。

頭の善し悪しが左右する地点にたどり着いていないことがほとんどだ。あとは訓練不足だ。

そのことがわかれば、勉強は、他のことにも役立てられる。
問題を良く観察すること。自分にはできる、という前提で問題を分解すること。
無理そうだったら、励ましを得ること。
そもそも、自分にその問題を解くことが、必要なのか判断すること。

わたしは、人付き合いが不得手だし、整理整頓も書類も苦手だ。
良く読めばできるけれど、気力を使うから、その件では撤退した。
それはあきらめだ。
だけど、わたしはあきらめたことに焦っていない。焦っていないし、困ってもいない。善後策を考えたし、人間関係が、極力必要がない状態を作り続けている。それができたのは、問題を良く観察したからだ。

人間関係に対して、能力が欠けている、できない、と知って、それまでは意気消沈してフリーズしていた。自分を責め、なんでできないのかと自問自答していた。

しかし、それは、無駄だった。できないと、信じていたから、自分を貶めて、枠にはまらない自分が悪いのだと思い、それ以上のことを考えず、行動せず、それなのに、頭の中が常に忙しくて疲弊していた。

わたしは悪くない。できないことも悪くない。できるようになりたくもない。できる範囲ですれば良い。

そういう風に考えを手放して、それから、不安になっているよりも、きちんと正確に悩んで、何をどうしたら良いのか考えた。人間関係を減らし、信頼できる人とだけ人付き合いをすることにした。信頼できる人を常に探すために、知らない人とも定期的に新規交流し、その人と無理だったらさっさとあきらめて、無理に付き合うことをやめた。つなぎ止めることをあきらめた。そうしたら、それほどさみしいと思わなくなった。
人付き合いが苦手だと、生きていくことが「できない」と思うことが、わたしの問題だった。
それは卑屈だった。
わたしには、人付き合いは最小限で良かった。
わたしは卑屈すぎた。

人付き合いが苦手なことが問題だったのではなく。問題を錯覚して、自分を守ることをやめた。問題を錯覚していると、自分が守られる。

自分を限定していると、傷に向き合わなくて良い。

自分は頭が悪い、能力がない、と言っていても、誰も助けてはくれない。

問題を良く読むこと、何が問題なのか、隠れた意図を探し出すこと、全体の配分を考えること、時間と能力、体力をどのように使うか、維持するか、何を広げたいのか、そういう判断をした上で、あきらめることは、前向きな撤退だ。

c71の著書

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